人気ブログランキング | 話題のタグを見る

昆明便り2-(3)

昆明便り2-(3)

中国だい好きの皆さん:

 お元気ですか。

中国も5月1日のメーデーで連休です。数年前は1週間程度の黄金周でしたが、今年は通常の祭日程度の休みで、一般的には28日の土曜日と30日の月曜日を振り替えて3連休です。私共は、4月4日の清明節に授業を行いましたので、30日の月曜日と振り替えて4連休です。数年前は各地の行楽地に人が集中して大混雑となりましたが、今は分散しているようです。また各都市でモーターショーを行っており、都市内イベントも多く、行楽地は少し混む程度のようです。近くの翠湖公園も数箇所のステージで少数民族の歌や踊りをやっていました。但し、北京の天安門、故宮等は大変な人出のようです。

雲南省は、政府の西北部開発の一環として、ベトナム・ラオス・ミャンマーと接する高速道路網の整備、昆明市の空港移転と5路線の地下鉄工事計画が進んでおり、急速な都市化が進んでいます。今の空港は市の中心から10km弱のところに有り大変便利でしたが、市の東部30kmへ今年の6月移転することになっています。また、これに併せて地下鉄も一部開通するということですが、余り広報が無く、中国人に聞いても様子がよく判りません。

昆明市は中心部から半径3kmの一環、5kmの二環、10~15kmの三環の3本の環状道路にドーナツ状に囲まれた街で、商業地は開発に伴い分散していて中心部がはっきりしません。住宅地は中心部から北西に一寸寄った雲南大学の側の翠湖公園周りが高級住宅地で、建物価格は20,000元(約26万円)/㎡、二環の内側で9,000元(約12万円)/㎡、三環の内側で7,000元(約10万円)/㎡程度で、今も盛んに開発されています。車はヨーロッパ、日本、韓国、アメリカと各国の車が市内を走り回っており、経済的には活気がありますが、少数民族や農村部との格差は開く一方のようです。

最近新聞に、昆明駅で夜間三環の外に行く客を乗車拒否するタクシーが多く、乗車拒否する7箇所程の“黒名単”(ブラックリスト)が出来ているという記事が載っていました。これ等の地域は、治安が悪いか、開発に伴い外部から民工が多く入っているとか、道が悪くユーターンが出来ないとかの問題が有るようです。昆明市内の治安は悪く有りませんが、少し郊外に行くと未だ問題があるようです。

また、旱魃で煙草の投げ捨てによる山火事が多く、山道を走る車は検問で全て記録され、火事が発生すると発生場所の近くを走っていた車の運転手は全て警察に1ヶ月ほど拘束されるということで、一般の車も郊外の山道を走ることを嫌っています。

連休ですので、1泊2日で、昆明市の西北約250kmの“黒井”に小旅行をしてきました。今年のおじさん留学生は旅行好きな人が少なく、今回は一人旅です。

昆明便り2-(3)_b0098096_12243268.jpg黒井は、彝族(イ族)が2500年ほど前に塩井戸を開削したといわれており、1000年以上の交易の歴史があります。雲南省北部やチベットにも有る、井戸を掘り塩水を汲み上げ、塩田で沈殿させ、薪で乾燥させて塩を作っていたようです。雲南省全体の納税額の内、明朝では67%、清朝では50%をこの黒井で精製した塩で賄っていたということですが、解放後燃やす木材が無くなり、また海外の安い塩が入って来て、急激に衰退し、現在は観光程度の塩作りしかしていません。

昆明便り2-(3)_b0098096_12232818.jpg黒井駅は、成昆鉄道(四川省の成都と雲南省の昆明を結ぶ鉄道)の昆明寄り4分の1程度の位置にありますが、四川省の“攀技花”までの1日1本の鈍行列車しかありません。途中駅が21あり、片道6時間かかります。前々日宿舎の近くの場外切符売り場で行きの乗車券は確保してあります。片道12元です。
7時30分発の列車に乗り込んでビックリしました。座席指定の9号車は、列車内の窓側に40cm幅の板を横一列にした席があるだけです。指定された場所にすわっていますと昆明からの行商帰りの人が大勢空の籠をもって入ってきます。観光客らしき人は殆どいません。指定座席数は50席ですが定員は118人と書いてあります。隣の車両は方側3席、もう片側2席で16列程の座席が有り、少し古いが中国の一般的な車両です。鈍行列車ですので軟席(二等車)はありません。昆明で乗った行商らしき人たちは途中の10駅ほどで殆ど降り、代わりにまた新たな荷物を持った行商らしき人たちが乗り込んできます。
何とも長閑な列車があるものだと、暫くは乗ってくる人の様子を興味津々で見ていましたが、3時間ほど経つと流石に尻が痛くなり、隣の一般的な車両に席を替えてもらいました。

成昆鉄道は、トンネルと橋が多いので有名ですが、黒井に着くまで、大体50程のトンネルを通ったと思います。余り大きな山ではありませんが、山の中腹に鉄道を通しており、車窓は谷底に川が流れて、緩やかな棚田が広がっています。昆明に近い場所では、麦と菜種の収穫時期のようで、畑では盛んに取り入れ、脱穀、次の作物を植えるための田起しを行っていました。今は乾季ですので、雨季になってから植えることと思います。黒井に近づくと、ビニール栽培や田植えを始めています、この辺りは水があるようです。
成昆鉄道は単線ですので、列車は各駅で急行や貨物列車待ちを5分~10分程度しますので、長閑さを通り越して飽きて来ます。しかも1時間遅れで黒井到着です。

昆明便り2-(3)_b0098096_12214899.jpg黒井に到着してまたビックリでした。駅の周りには駅舎以外の建物が全く無く、勿論タクシーもいません。駅からの細い坂道を降りた鉄橋下に、5、6台の馬車と2,3台の車が待っていました。途中駅もそうでしたが、駅は山の中腹にあり、街から離れています。仕方なく、人のよさそうなおばさんが客集めをしている馬車に乗ることにしました。運賃は3元です。駅を降りた人は30人程度で、迎えの車に乗る人や歩く人もいますが、我々にとっては馬車が唯一の交通手段です。

茶馬古道の出発点の一つである“易武”というところに行ったことが有りますが、其処はバスは通っていますが、タクシーは1台もありませんでした。それでも道路は広く、街の人は車を持っていました。黒井は山の中ですので、車の数が少なく、列車と馬車の交通手段で足りているようです。
黒井の街に近づくと、道は石畳になりました。黒井は雲南省の歴史文化名鎮に指定されており、古い街並みを保存していました。乗った馬車の馬方が客栈(民宿)をやっているということで、其処に停まることとしました。1泊30元です。

昆明便り2-(3)_b0098096_1221815.jpg観光客は少ないですが、街は寂れた感じは無く、人の表情は穏やかで、着ている服も清楚です。農村部とはまた違った雰囲気です。また馬車に乗って古盐坊(製塩工場跡) 大龙祠(明朝創建の古戦台と氏神祠)武家大院(清朝の塩商人屋敷)を見てまわりました。拝観料は併せて30元、馬車代20元です。観光客が少なく、馬方は専用ガイドです。

昆明便り2-(3)_b0098096_12202176.jpg実に長閑で、ノンビリした旅が出来ました。帰りの列車は、前売り指定券が買えなかったので、乗客が多いからかと思っていましたが、切符は全て車両指定の無席(自由席)です。ホームで列車を待っていましたら、来たときと同じ車掌の姿が見えましたので10号車に乗り込みました。車掌は週3往復6日働いて1日休みの勤務体制だそうです。私は半分乗っただけで疲れましたが、列車乗務員も大変です。
例の板張り座席の9号車を覗いて見ましたら、通路に行商商品を並べて社内販売をやっています。私も葡萄を1公斤(1kg)買いました。中々の賑わいです。来るときと同じ様に行商らしき人は途中駅で降り、昆明まで行った人は数人だけでした。

思いつきで旅行しましたが、決して豊かだとは思いませんが、雲南の長閑で穏やかな生活の一部を垣間見ることができ、良い休日でした。      
日本も行楽シーズンになっていると思いますが、中国だい好きの皆さんも思いっきり楽しんで下さい。

再見!
2012年5月1日
長尾圭介
by zuixihuan | 2012-05-11 12:13 | 昆明便り